司役 谷山紀章×悟役 小野友樹のスペシャル対談公開中!
2019/12/31TVアニメ「pet」放送に先駆けて、司役 谷山紀章×悟役 小野友樹のスペシャル対談が公開。お二人から作品に向けての熱い気持ちを伺いました。
司役 谷山紀章×悟役 小野友樹のスペシャル対談!!
【運命めいためぐり逢い】
一足先に舞台化され大好評を得た三宅乱丈原作の人気コミック『pet』が、ついに2020年1月よりアニメ放送スタートを迎える。本作では、人の記憶を操作することができる特殊能力者”pet(ペット)”たちが孤独と愛憎、そして運命に翻弄されていく物語を描く。
アニメ制作も終盤戦に差し掛かった某日、司役・谷山紀章と、悟役・小野友樹の対談が実現した。役者としても縁のある、2人ならではの内容をお届けする。
≪何かがグワっと身体に入り込んでくるみたいな感覚≫
――原作の漫画『pet』との出会いについて教えてください。
小野「オーディションの機会をいただいた時に初めて原作を読ませて頂いて、三宅乱丈先生のタッチの独特さ、人物も風景も唯一無二のものを持っていらっしゃるところにまず惹かれました。絵から伝わってくる情報が想像以上で、何かがグワっと身体に入り込んでくるみたいな感覚があって。ご縁をいただけて嬉しいです」
谷山「僕はもう初連載作『ぶっせん』の時から連載を毎週楽しみにしていたくらい、もともと乱丈先生の作品を追っかけていました。ずっとギャグテイストのものを描かれていた中で、『pet』が初めてシリアスな作風で。私見ですが、ギャグが上手い人は絶対シリアスも上手い。『pet』はそんな期待を遥かに上回る作品で、リアルタイムで楽しみにしていました。先生の大ファンなので作品は全部好きですが、『pet』は特に好きですね」
――原作を読んだ時はどのキャラクターが気になりましたか?
小野「オーディションでは悟のシーンを中心に頂いていたので、悟をメインに読んでいましたが、原作を読む中で気になっていったのは司かな。最初は頭が良くて筋の通った信念があると思っていたら、意外と大きな間違いを犯していたり、もろさも持っていてすごく人間味がありますよね。そして桂木も気になるキャラクター、『そういうバックボーンがあったんだ!』と」
谷山「ヒロキと司が主役の物語ではあるけど、僕が読んでいる時は悟が気になりましたね。冒頭に出てくるシーンが子供時代の悟なので、最初、僕は悟が主役の物語かなと思っていたんです。
あと、いちファンとしては司が怖いと思っていましたね。すごく狂気をはらんでいて運命に翻弄されている人物で、逃げ場がなくなってどんどん追い込まれていくんだけど、どこかヒール的な悪役にもかかれていて。『ぶっせん』とかは、誰が主役でも見られる作品で、『pet』も誰目線でも見られる。今回役をいただいて司目線で改めて読んで、司って本当に不憫でかわいそうな運命を背負っている男だなーと。
そしてもう一人は桂木ですね。大森(貴弘)監督も桂木が好きとおっしゃっていましたが、『わかるよ監督、桂木は良いキャラだよね』って。最後まで読むと涙腺崩壊です」
≪一人の人物を取り合う、恋愛に似ていますよね≫
――役作りやアフレコのご感想は?
谷山「覚悟は必要だなって思いましたね。司に入り込んでしまうと絶対にしんどいだろうから。そして身も蓋もない言い方だけど、『pet』の原作ファンの方々に気に入られようとはしています(笑)。すごく好きな漫画作品があって、それらがアニメ化する時の原作ファンの気持ちって、複雑な部分があるじゃないですか。“頼むぞ”と(笑)。イメージと違うと言われることもあったりするので、そういうものが極力ないように、気に入られますように、と思いながらやっています。
漠然としていますが、原作のファンの方々の司のイメージ像があるとして、それを全部集めて割るような、最大公約数的とでも言えばいいのかな、そういうところでできればなと。とにかく原作ファンの方の機嫌を損ねないように納得していただけるイメージで演じていますね。なぜなら俺自身も原作のファンなので、技術論というよりは精神論みたいなことですけど(笑)」
小野「僕はこのアニメに参加させていただくのが作品に触れるきっかけだったので、最初の感覚を大事に悟を演じていますね。色々重ねすぎると年齢感が上がってしまうので、“あくまでまだ10代の若者なんだ”というところに立ち戻ったり、そこを意識しながら監督とディスカッションして悟を演じさせてもらっています」
――「pet」は誰かに認められたい願望や嫉妬など、誰もが持っている感情がむき出しになって描かれており、どの人物の想いにも痛いほど共感してしまいますよね。
小野「悟には林という“ヤマ親”がいて、その林さんへの想いが、ヤマの景色を作っている者への想いだとしたら、僕にとってのヤマの景色みたいなものは谷山さんが少し関係していらっしゃるので、尊敬する方への想いみたいなものは少しわかるなって感覚はありますね」
谷山「かゆい話が(笑)
司の嫉妬深さとか、乱丈先生は人間の醜い部分を強烈に描き出していますよね。作中で(以下ネタバレ注意)、何も知らない悟が司の前でデリカシーもなく“林さんのことは僕が一番近くにいてわかっているんだ!”としゃあしゃあと言うんです。その時の司の死んだ目になってる所とか、“もともと嫌いだったけどホントにいまので決定的だわ”という感じがもう。
一人の人物を取り合うあたりが恋愛に似ていますが、あの気持ちはわかるというか本当に演じていてムカムカして、“司ちゃんそうだよね”って。林さんに対する複雑な想いに愛憎が入り混じって、それによって身動きが取れなくなったり。悟をスケープゴートにするしかなかったのか、捻れちゃって…。司にとって悟という存在がある種キーマンであり、深い因縁の対象。演じる上で司に入っていくと悟を邪魔に思わないといけなくて、物語が進むにつれて大っ嫌いって(笑)」
――他の役を見て感想や苦労、発見がありましたら教えてください。
谷山「物語では中国語を話す役が出てきますが、その役になった方は心中お察しします。ロン役の遊佐さんをはじめ、皆さん中国語をがんばっていますよね。そこ(※原作コミックスで登場人物たちが中国語を話すシーンは、アニメ現場でも中国語で収録を行っている)は物語をリアルに感じさせるためのこだわりでしょうね。俺もやるんだったら臨むところだ、という気持ちだったんですけど、セリフにすると中国語は思ったより難しくて(笑)」
小野「一度日本語でセリフを録音して、中国語の先生に聞いてもらったうえで、それを参考に“この感情で言うならこういうアクセントです”と再度現場で直されるので、セリフの暗記だけでは通用しないんです」
谷山「僕は現場で先生のアクセントを耳コピして“感情を乗せたらこうですか?”と確認しながら演じています」
――司と悟に声をかけるとしたら?
※この質問は一部本作のネタバレを含みます※
谷山「司はヒロキがいないとダメだし、ヒロキも司がヤマ親なのでいないとダメで、司に関しては本当に切なすぎて。全ては林さんに対する愛憎から。司は真面目なんですよね、司には林さんが一番気にかけていたのはお前なんだと言ってやりたい」
小野「悟はみんなが上手くいくためにはどうしたらいいのか突き詰めようとする、一番平和であろうとする人。悟の想いが届くべきところに届くといいなと思います」
≪乱丈先生は“奇才”という言葉がぴったり≫
――三宅乱丈作品の魅力は?
谷山「圧倒的なオリジナリティだと思いますね。ルーツはどこなんだろうと思ったら、BL(ボーイズラブ)だったり…というお話を聞いて、驚いて。急に現れたような感じがして、本当に“奇才”という言葉がぴったり。しかも女性だと初め思っていなくて、(三宅乱丈という名前が)ミケランジェロをモジっているのはすぐわかったんだけど、衝撃でしたね。絵柄のタッチもすぐ飲み込めたし何よりすごく面白い。『秘密の新選組』とか短編集もいい」
――『pet』以外でアニメや映画、舞台など他のメディアで見たい作品は?
谷山「やっぱりメディアとして見たいのはアニメかな。『pet』の大森監督はガチガチの原作ファンだそうで僕はすごく嬉しくて。原作リスペクトがある方が作っていただくことを前提としたら、やはり『イムリ』。ラルドを演じたい! 『ぶっせん』だったら徳永をやりたい、徳永が好きなんです」
小野「僕は先に『pet』を読んだ状態で『ぶっせん』を拝見してびっくりして、ギャグだったのは意外でしたがめちゃくちゃ面白くて。この要素を『pet』では排除して書かれているのにこのクオリティの凄さ! 先生が持っている才能の凄さ、凄まじさは底知れないと思いました」
谷山「凄いんですよ! 『イムリ』はキャストが思い浮かばないので、逆にそう来たかと驚きたい! だめだ! 俺、信者みたいになってる(笑)」
≪参加できていることも含めて運命≫
――「声優になるきっかけが谷山さん」という小野さんの谷山さんへの熱い想いは広く知られていますが…。
谷山「僕は認めてはいませんけどね(笑)」
小野「(爆笑)僕の一方的な想いではあります」
――昨日はよく眠れましたか?
小野「あ、明け方に(笑)」
谷山「(ふたりとも)念が強いってことですよね。僕が今回『pet』をずっと好きで役までいただいて、それは念が引き寄せたと思っていまして、(小野さんとの共演も)そういう事なんだなって。俺の乱丈先生の『pet』に、何も知らないのにキャスティングされやがって!(笑) 最初キャスト表を見た時、“わちゃーーー! (小野さんが)いるよッ! 悟って超重要だよ、頼むぜ”と。でも以前から共演していて、声とかどんな役者かはわかっていたので、そっか、悟ならアリかと(笑)」
小野「ありがとうございます!」
――かなり塩対応ですね(笑)
小野「それが谷山さんです」
谷山「彼は培ってきたキャリアと真面目な所があるので、どんな悟になるのかと楽しみにはなりました」
――谷山さんは小野さん以外の「自分を目標にしてきた」という後輩たちにはどう接していますか?
谷山「僕は基本後輩には優しいですよ、嫌われたくないので(笑)。“紀章さんて見た目怖そうだけど本当はイイ人だよね”と風評を自分で作っています。彼(小野さん)は放っておいても来るので(笑)」
小野「(笑)」
谷山「打たれ強いのであえての塩対応というかツンをやっているところもあるけど、これでデレたら気持ち悪いでしょ。それでも一回だけ、仕事が終わった後に2人で飲みに行く?と珍しくデレてやったことがあるんだけど、“すみません用事があるんで”と断られて! 二度と誘ってやらねぇと思いました(笑)」
小野「(爆笑)すみません、本当にすみません! じくじたる思いとはこのことかと、漢字では書けないけど」
――そんなことがあっても(笑)、小野さんが谷山さんからお仕事で刺激を受けることはたくさんあったのでは?
小野「本当にそうですね。営業妨害かもしれませんが、2人の時はすごく優しいんです。僕なんぞに本当に優しくしてくださる方で」
谷山「どんどん言って」
小野「嬉しかったことはたくさんあります。この作品でも、オーディションのお話をいただいた段階で、“タニ(谷)とヤマ(山)だ!”って気が付いて(笑)」
谷山「そうなのよ! “もう俺だよ”ッて! できすぎだよな! 俺、谷山で良かったって思ったもん」
小野「マネージャーともそれを話していて、いざキャスト表を見たら本当に(谷山さんのキャスティングが)決まってた。谷山さんご自身が作品の大ファンでいらっしゃった事を含めて“引き”だったんだなって。そこに僕も参加できている所も含めて全部が運命だったのかなって」
谷山「ネタみたいな話だよね。乱丈先生がタニとかヤマを使うだけで嬉しくなっちゃう。って、俺すごく変なこと言ってる?(笑)」
――では最後に意気込み、メッセージをお願い致します。
小野「運命めいためぐり逢い、作品自体に引き寄せられているかのような仲間たちと一緒に作品を作れていることに、まず幸せを感じております。この作品がアニメとして皆さんにお届けできるところまでようやくたどり着きました。是非楽しんで頂ければと思います。
原作の持つ力をアニメに落とし込む唯一無二の機会ですので、是非二度三度と見ていただいて、『pet』の世界観により深く沈み込んでいただけたら嬉しいです。
原作の漫画も舞台もあわせて、色々な形で『pet』を引き続き楽しんでいただけたらと思います」
谷山「『pet』は大森監督がおよそ10年、どうしても映像化したかったという強い想いが込められた作品。幸いにも、僕も原作が大好きで、原作愛を持ってやらせていただいております。 監督がこの作品に惚れ込んでいることがすごく大きくて、原作ファンの期待を裏切ることは無いと思っています。
“映像化して魅力が増したね”と言われるような、そういう作品になれると確信しています。原作が読む人の魂を揺さぶるものすごい作品なので、その映像化を期待していただきたい! より多くの方に見ていただきたい! それだけです」
(インタビュー/撮影:谷中理音)